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財団だより

令和元年度 (2019年度)を迎えて
 横浜総合医学振興財団は、平成4年(1992年)4月の設立以来、5億6千万円にのぼる医学研究・教育の助成を行って参りました。横浜市立大学医学部だけでなく、広く横浜市、神奈川県内の医学医療の発展に大きく寄与しております。
皆様には格別のご理解、ご協力を賜わり厚く御礼を申し上げます。
3月19日開催の理事会では、新年度予算のほか理事長の交替が決議されるとともに、財団に2億3千万円もの御寄付をしていただいた梅原清氏のご逝去を報告いたしました。本稿の最後に「梅原清氏を偲ぶ」記事を掲載してございます。

新理事長に後藤英司理事を選任
 この理事会の席上、「私は昨年8月から体調が優れないため、理事長職務の遂行が困難と判断しました。後任理事長には後藤英司理事を推薦いたします。」と発言し、満場一致で出席理事の皆様の承認をいただきました。ここに第4代理事長が選出されました。
 私はかねてから、財団設立当時の俱進会の皆様の財団への熱い思いを引き継ぎ、財団の永続と発展を担ってくださる若い理事長への世代交代を考えておりました。今回、円滑に新理事長が選出され、本当に安堵の思いであります。後藤理事は、昭和50年3月、本学医学部を卒業、昭和57年、同大学助手(内科学第二講座)に就任。講師、助教授を経て平成14年1月に医学研究科教授に就任され、平成26年3月に定年退職をされました。前職は横浜保土ケ谷中央病院病院長。昨年6月に古希を迎えられた新進気鋭の理事でございます。
 理事長就任は5月開催の新年度第1回通常理事会の予定です。新たな時代を迎え、新理事長のもと、皆様には引き続き財団にお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

新年度予算を決定
 新年度予算は3月19日の理事会、3月28日の評議員会でそれぞれ審議の上、決定されました。本年度も堅実な予算としております。
助成事業など公益事業では26年度の予算のレベルを維持、継承し、同年度に変更・延長した公益目的支出計画(※)に則った予算となっております。
売店など収益事業では、収入、支出とも30年度の実績を踏まえた着実な額を計上いたしました。
 賛助会費収入につきましても実績に則った額を計上しています。
※ 公益目的支出計画:新法人移行時の正味財産額を公益事業に使い切る年次計画。計画終了年度を2030年度末までに延長しました。
 以下、新年度予算の要点を説明します。


31年度予算の具体的内容
 公益事業を中心にご説明します。公益事業の予算総額は2220万円で昨年度より135万円減額ですが、指定寄付助成額の減額150万円が主な理由です。
なお、各項目の予算額は特段の記載がない限り前年度と同額です。

Ⅰ 研究等助成事業  総額1860万円
1 推進研究助成  合計900万円
 故梅原清氏御夫妻からの御寄附を財源とする梅原基金による助成です。臨床応用が期待される優れた医学研究に対する助成で、原則として3か年度継続助成を予定しています。
   助成額 1件100万円 計8件
 当助成を受けた研究のうち特に優秀な研究に授与する梅原賞は、30年度分と併せて2か年度分を審査します。
   梅原賞副賞 1件100万円

2 わかば研究助成 合計600万円
 大学院生を含む35歳以下の医学研究者を対象にしています。将来性のある若手研究者への助成で当財団の特色となっている助成です。
   助成額 1件50万円 計12件

3 医療技術研究助成 合計100万円
 横浜十全会基金を財源とする助成で、医師を除く医療従事者が行う実務的研究や業務改善を図ることを目的に助成します。
    助成額 1件20万円以内 

4 医学・医療関連事業助成  合計200万円
 医学・医療における社会的課題に対する組織的活動の支援を目的に助成します。
    助成額 1件50万円以内

5 指定寄附助成  合計60万円
 助成研究領域を指定した寄附金に基づく助成です。指定寄付金が10万円以上30万円未満のものについては一定額を加算して30万円を助成します。
   ①  腎臓がん関係       30万円
   ②  腎臓内科学関係     30万円

Ⅱ 横浜市大教育等助成事業  総額220万円
1 大学院優秀論文賞副賞の授与  授与合計額 20万円
 横浜市立大学大学院優秀論文賞の受賞者4名程度に副賞を授与します。
    副賞額 1件5万円程度

2 国際学術交流事業助成  合計 20万円
 国外からの短期の医学・医療の研修等に助成します。
    助成額 1件10万円

3 学生自主的活動助成  合計 150万円
 横浜市立大学医学部の学生が自主的に行うボランティア活動等や国内・海外の研修や実習に対して助成します。
     助成額 1件15万円を限度として 必要経費の概ね2分の1の額

4 学術講演会助成  合計 30万円
「三杉記念医学教育研究基金」を財源として28年度に開始された医学教育
研究への助成です。従来と同様、学術講演会への助成を予定しています。
 30年度に三杉基金への寄付300万円をいただきましたので助成額を10万円増額しました。
     助成額  1件5万円以内

Ⅲ 医学・医療啓発事業  合計 140万円
  例年どおり研究報告書及び事業年報を冊子形態で発行し、あるいはホームページへの掲載等により、医学・医療の知識啓発を進めます。

① 助成の実績,効果をアピールする広報誌を発行
  財団の医学研究等への助成実績とその効果、成果をわかりやすく表現した広報誌「わかば」を発行、配布して財団の意義を広く周知してまいります。発行部数は前年度と同じ6000部の予定です。

Ⅳ 附属2病院の売店経営
 平成28年度から抜本的な経営改善を実施し、永く院内売店として培った医療衛生用品に関する豊富な知識並びに親切、丁寧な接遇をモットーとした売店づくりに努めております。
30年度も29年度に続き、売店だけの収支で黒字となる見込みです。自動販売機を含む31年度の収益事業全体の純益は、800万円の予定で、売店経営安定化準備金として積み立てる100万円を差し引いた700万円を研究助成など公益事業の財源に振り替えます。
 公益事業を支える収益事業として、引き続き、ご利用しやすい売店に向けて努めてまいります。ご愛顧のほど宜しくお願い申し上げます。

 次に収入面の予算などをご説明します。
Ⅴ 財団賛助会員加入の募集
 御寄附のPR 
 財団賛助会費及び寄附金収入も公益事業の極めて重要な財源でございます。
賛助会費は、倶進会会員の先生方を中心に多くの方々の御協力をいただき、3月末現在で302名の方から30年度会費を納入していただきました。
     既加入賛助会員      255名
     新規加入賛助会員      47名
 財団賛助会会員制度発足時の計画では毎年、会員20名増加を目標としておりますが、残念ながら28年度の387名がピークとなっております。新規会員は増加していますので、既加入会員の減少ということになります。
 一方、寄附金収入は賛助会員、倶進会員の方を中心に約196万円(前年度約234万円)でした。このほか、賛助会員の方から三杉基金への寄付が300万円ございました。厚く御礼申し上げますとともに、今後とも賛助会員ご加入、継続並びにご厚志を賜わりますようお願い申し上げます。
 このほかの収入として、公益事業基金の取崩がございます。年次計画に従い前年度と同額の900万円を限度額としております。
 公益事業の予算規模を確保するため、平成25年度から理事会、評議員会の決議をいただき、財団設立時の基本財産を財源とする公益事業基金2億5430万円の一部を必要に応じて取り崩すことにしているものです。
 設立から27年余が経過する中で幾多の試練がありましたが、3月の理事会及び評議員会で財団の永続について多くの方が熱く語られました。そのための財源である御寄付について俱進会をはじめとして支えていきたいとの意見が出され、心強く思った次第です。
 後藤新理事長のリーダーシップのもと、関係皆様方の御支援をいただきながら、財団がさらなる発展をするよう祈っております。倶進会会員皆様の更なるご協力を切にお願い申し上げます。
 最後に平成23年の理事長就任以来、皆様に支えられてきたことに深甚の感謝を申し上げます。

梅原清氏を偲ぶ
 梅原清氏(91歳)は平成31年2月11日にご逝去されました。
 梅原氏は小宮弘毅氏(元神奈川県衛生部長、元財団評議員)より医学研究費が不足している実情を聞き、平成15年1月、智子夫人と共に当財団に2億円の寄付を約束され、さらに平成25年10月、3千万円の追加寄付をして下さいました。
 梅原氏のご希望は医療の発展に貢献する実践的な医学研究の成果でした。
 梅原基金を設立し、ご希望に沿った趣旨で「推進研究助成」を立ち上げました。既に相当の実績をあげている将来性が期待される医学研究者を厳選し、年間総額1千万から1千5百万円、原則3年間の継続研究助成を行いました。平成30年度までの助成件数は210件、助成総額は2億245万円です。財団の財政難のなか、まとまった額の継続研究助成が可能となり、その結果、多大な医学研究の成果を得ています。
 平成18年、梅原賞を設立し、特に優れた研究に対して授与しています。現在までの梅原賞受賞者は7名です。研究課題(要約)は「遺伝子、ペプチド導入による神経再生医療」「前立腺癌の分子標的治療」「動脈管内膜肥厚制御の分子機構の解明」「男性不妊症の治療法の開発」「軸索伸長促進物質による神経再生」「iPS細胞を用いた三次元肝・膵組織創出法の開発」「動脈硬化症における炎症の永続性をもたらす自己抗体を介する自己免疫基盤の解明と診療への応用」です。いずれも、医療の発展に貢献する優れた研究で、国際的に高く評価されています。
 梅原ご夫妻がお元気なころ、研究施設を見学され、研究者と親しくお話をされました。また、研究成果の報告に熱心に耳をかた向けておられました。梅原氏は電磁波の研究をされ、海洋学の教育者の経験をお持ちです。「私の背には悪魔が宿っています。それが時には神でもあり仏でもありました。お陰様で幾多の難関を乗り越えることが出来ました」と話されていました。それだけに研究者の苦難に深い理解を示されていました。
 小川毅彦教授(本学大学院、生命医科学研究科)は平成23年度第4回梅原賞を受賞しました(当時、本学大学院泌尿器病態学准教授)。研究課題は「男子不妊症の治療法の開発」です。百年来世界の研究者が成し遂げられなかった精子形成をマウスの精巣組織培養により成功させました。読売テクノ・フォーラム、ゴールドメダル賞を受賞しています。
小川教授は受賞記念講演で「研究助成のみならず、研究室を訪問された際のお言葉に励まされました」と謝辞を述べました。梅原氏はこの謝辞に深い感銘を受けられたご様子でした。まさに助成の趣旨を成就した実例と受け取られたものと思われます。その後、追加寄付をして下さいました。
 ここに改めて梅原清氏に深謝し、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

                                          (理事長 井出  研)